美しい縞模様や巨大な嵐が特徴の木星は、地球とは全く異なるガス惑星として知られています。
そして、木星には地面がないとも言われています。
ガス惑星である木星は人類にとってまだまだ未知の惑星ですが、木星についていろいろと分かってきていることもあります。
地面がないということは着陸ができないわけですが、そのような木星をどうやって探査しているのでしょうか?
木星の構造やその探査方法についてはとても気になるところです。
そこで、この記事では、
・木星には地面がなく、着陸できないのか?
・ガス惑星である木星の探査方法は?
について紹介していきます。
木星に地面はあるのか?
木星には地面がありません。
木星はガス惑星と呼ばれる惑星で、主に水素とヘリウムという気体からできているので、人類が生活している地球のような固い地面は存在しないとされています。
木星の表面は分厚いガスの層の外側にあたります。
このガス層の内側に入っていくにつれて、圧力がどんどん増していき、深い場所ではガスが液体や金属水素(水素が莫大な圧力によって金属のように電気を通す性質を持つようになった状態)という特殊な状態になっていると考えられています。
さらに奥の中心部には木星の核が存在すると考えられていて、これは地球の地面のようなものとは違い、かなりの高温と高圧の環境にあり、岩石状の物質や氷、金属に近い状態の水素・ヘリウムの混合物である可能性が考えられています。
もともと気体であった水素が金属のような状態になるなんて、地球でふつうに生活していると想像もつかないような異次元の圧力と温度ですよね。
ガス惑星とは?
ガス惑星は主に水素とヘリウムによって構成されていて、固体の表面を持たず、ほとんどがガスの塊になっています。
ガス惑星は表面が曖昧で、内部に向かってガスが圧縮され、液体状に変わっていくという非常にユニークな構造です。
代表的なものに木星と土星があり、次のような層構造になっていると考えられています。
外層(大気層)
ガス惑星の表面とされる部分で、主に水素とヘリウムが多く含まれる厚い大気層です。
この層は雲が多く、大気の流れによって縞模様のような層が見えたり、巨大な嵐(木星の「大赤斑(だいせきはん)」や土星の六角形の嵐など)が生じたりします。
木星の大赤斑は、木星の南半球にある巨大な高気圧性の嵐(最大風速は時速約650kmにも及ぶ!)で、少なくとも1831年から継続的に観測されています。
19世紀後半には直径約4万kmと地球の約3倍ほどの大きさがありましたが、現在では縮小する傾向にあり、2014年時点で約1万6500kmにまで小さくなっています。
木星の縞模様は紅茶やコーヒーにミルクを入れたときに、お互いがクルクルと混ざり合っていく瞬間のようにも見える感じがして、とても鮮やかで印象的な見た目ですよね。
液体水素層
大気層の内側に進むにつれて、圧力がどんどん増していきます。
この液体水素層では、外側では気体であった水素が圧力によって液体のような状態になっており、この層は大気層よりもはるかに厚いと考えられています。
金属水素層
さらに深部へ進むと、水素は金属水素という特殊な状態になります。
超高圧により水素が非常に密に圧縮され、金属のように電気を通す性質を持つようになるんです。
この金属水素層は磁場を生み出す役割を果たしていると考えられています。
核
一番奥にあるのが核です。
地球の地殻やマントルのような固体ではなく、圧力と熱により、どろどろに溶けた岩石状の物質や氷などが含まれていると推測されています。
核が存在するかどうか、またその成分についてはまだ研究が進行中ですが、ガス惑星が形成されるときに、最初に核ができたと考えられています。
ガス惑星の構造はとてもユニークで、地球のような岩石惑星とはまったく異なるんですね。
この層構造は、まだ観測データからの推測も多いため、将来の探査で新たな発見があるかもしれません。
木星には着陸できない?
木星には固い地面がないので、着陸はできません。
もし宇宙船が木星に向かって降下したとすると、次第にガス層に突入していくのですが、このガス層はどんどん濃くなり、途中からは猛烈な圧力と温度にさらされてしまいます。
木星の内部に向かうにつれて圧力が高くなっていき(地球の中心部の圧力は約364万気圧で、木星の中心部の圧力は諸説ありますが約4,000万気圧以上と考えられています)、ガスが金属のように電気を通す金属水素という特殊な状態になっているとされています。
この圧力と熱に耐えられるような探査機は、今の技術では実現されていないため、実際には着陸も内部の探査もかなり難しいようです。
木星の探査方法は?
このため、木星に着陸するのではなく、探査機を木星の周りを周回させたり、大気中に突入させてデータを収集する方法が取られています。
大気への突入探査
1995年12月7日、NASAのガリレオ探査機が木星の大気にプローブ(小型探査機)を送り込みました。
このガリレオ・プローブは今のところ、木星の大気に入った唯一の探査機で、約58分間にわたって約150kmほど進入し、大気上層部の組成や構造について重要な情報を収集しました。
周回探査
木星の探査は主に周回軌道からの観測によって行われています。
NASAのジュノー探査機は2016年7月5日に木星の周回軌道に投入され、現在も観測を続けており、高精度の重力場測定や磁場観測を行い、木星の内部構造の調査を行っています。
今後の探査は?
エウロパ・クリッパー
2024年10月14日に木星の氷の衛星エウロパの探査のためにNASAのエウロパ・クリッパーが打ち上げられました。
エウロパは月とほぼ同じ大きさで、木星の第二衛星であり、表面が氷の層で覆われているため氷の衛星として知られています。
そして、この氷の層の下には液体の海が存在すると考えられており、生命が存在する可能性のある環境として大きな注目を集めています。
エウロパ・クリッパーによる今回の探査は、2030年4月に木星の周回軌道に入ることが予定されていて、エウロパに生命を育む環境があるかどうかを探査することが目的とされています。
JUICE:JUpiter ICy moons Explorer(ジュース:木星氷衛星探査計画)
このJUICE計画も木星の氷衛星を探査することを目的として、2023年4月14日に探査機が打ち上げられました。
この探査計画はESA(欧州宇宙機関)が主導しているもので、欧州各国をはじめ、日本や米国、イスラエルなども参加している国際的で大規模な探査計画です。
探査が予定されているのは、主にカリスト、エウロパ、ガニメデという衛星です。
カリストは表面が氷と岩石の混合物でできていて、エウロパやガニメデに比べると表面の氷がやや暗い色をしています。
カリストは内部活動が少なく、表面があまり変化していないため、より古い地形が残っています。
表面には多数のクレーターがあり、内部には海が存在すると考えられています。
ガニメデは、木星の衛星の中で最大(太陽系全体でも最大の衛星)で、表面は分厚い氷に覆われており、その下には海が存在すると考えられています。
また、ガニメデは太陽系の衛星の中で唯一、磁場を持っており、このことから内部に液体の鉄や岩石の層が存在する可能性が考えられています。
このJUICE計画では、これらの氷の衛星の内部に海が存在するかどうかや、これらの組成、また地質活動の有無などを調べて、木星が形成されたときの情報を収集することが目的とされています。
この探査計画では、2031年7月に木星系に到達してから2034年11月までの期間でカリストを30回以上、エウロパを2回、それぞれ近接観測したのち、2034年12月にガニメデの周回軌道に入って探査を行い、2035年9月にミッション終了の予定です。
木星には地面がないから着陸できない!?ガス惑星とその探査方法とは?まとめ
ガス惑星である木星には地球のような地面がありません。
なので、地球のようには着陸できないわけですが、今の時点では木星の内部があまりにも高圧・高温なので、もし地面のようなものがあったとしても、そこまで到達できないという状況のようですね。
木星の研究は、太陽系の形成過程や地球外生命の可能性を探るために重要なテーマだと言われています。
木星はまだまだ未知の惑星ですが、今後はエウロパ・クリッパーや、JUICEなどのミッションもあるので、木星や衛星の様子が少しずつ解明されていく過程を見守っていきたいところです。